乳歯の生えかわりが遅いことが気になり口周りを触っていた時、
下顎切歯部分の歯肉が一部膨れているのに気付き、かかりつけの動物病院を受診。
そこで顎嚢胞(がくのうほう)の可能性があるとのことで当院を紹介され、来院されました。
顎嚢胞(がくのうほう)とは
顎骨内にできた嚢状のもので、中に液体が溜まっています。
顎嚢胞は周囲の顎骨を圧迫し、歯の喪失や顎骨の崩壊につながる可能性があります。
診断には、麻酔下での口腔内検査と歯科レントゲン検査が必要です。
嚢胞内の液体吸引を行っても再発を繰り返すため、治療は嚢胞壁ごと摘出します。
また、嚢胞の影響を受けた歯は抜歯処置が必要となります。
診察では、下顎吻側左側の歯肉が膨らんでいるのが認められました。また、乳歯が6本抜けずに残っていました。
顎嚢胞の可能性があるため、早期の歯科レントゲン検査・歯科処置を行うことになりました。
後日実施した術前検査では、
大きな異常は認められませんでした。
口腔内の確認
レントゲン検査
矢印は抜けずに残っている乳歯です。丸で囲ったところが腫れている部分です。
①の歯の部分は①が歯肉内に埋伏したままで歯冠(歯の頭の部分)が嚢胞内にある「含歯性嚢胞」
②③の部分は、歯根が嚢胞内にある「歯根嚢胞」でした。
そこで、乳歯の抜歯、嚢胞の摘出、嚢胞の影響を受けていた①②③の抜歯処置を行いました。
スケーリング
乳歯の抜歯
顎嚢胞の摘出・①②③の抜歯
洗浄後、止血・粘膜保護材を挿入、縫合
ポリッシング
顎嚢胞はあごの骨に大きなダメージを与える可能性がのある病気です。
今回、お口の異常に気付かれたのは飼い主さまでした。
歯の生えかわりや歯肉の様子などを、飼い主さまが日頃見て触ってチェックされていたからこそ、早い段階で気付き、治療。
大事なあごの骨を守ってあげることができました。
毎日のデンタルケアとともに、歯や歯肉の色、腫れ、口臭など、変わったことがないかチェックすることも大切です。
少しでも気になることがありましたら、早期の受診をおすすめします。