クシャミをすると鼻から膿が出る・顎がガクガクする<重度歯周病>(ミニチュアダックスフンド 16才)歯科症例89

 

クシャミをすると鼻から膿が出る

アゴがいつもガクガクしている

食欲はあるが、ドライフードを好まなくなってきた

歯ブラシでの歯みがきを嫌がるので、歯みがきシートで歯を拭いているが、奥歯を触ると「キャン!」と言う

とのことで、来院されました。

 

一年前に他院にて、歯科処置を実施していたこともあり、歯石は多くないにも関わらず、歯肉の腫れがひどく、歯肉全体に発赤がありました。

上顎犬歯の内側に、歯垢・歯石の付着がありました。

 

 

このわんちゃんは他院にて既に、心臓のお薬を処方され、また血液検査では腎臓の項目の軽度の上昇がありました。

その結果を踏まえ、充分な術前検査を行いました。

 

今回の術前検査で、更なる腎臓機能の低下が認められました。

飼い主さまと相談し、処置の一週間前から腎臓に対する治療を行い、また歯肉の炎症がひどかったので、感染による炎症を軽減するため、術前から抗生物質も飲ませていただきました。

 

術前に再度血液検査を行いました。

すると上昇していた腎臓の項目が下がっていましたので、処置は出来ると判断しました。

 

 

歯周プローブ検査

歯周ポケットは、左上顎犬歯が12mm以上と深く、他の歯も、深くなっている箇所がありました。

 

歯科レントゲン検査

後に通水テストで「口腔鼻腔ろう」が確認された、左上顎犬歯のレントゲン写真です。

明らかな骨吸収像は認められませんでしたが、歯根膜のラインが消失しており、アンキローシス(骨性癒着)が予想されました。

 

歯神経ブロック

 

スケーリング

 

ルートプレーニング

歯肉縁下の汚れを1本ずつ手作業で掻き出します。

今回、歯の表面の歯石は多くありませんでしたが、歯肉縁下から多量の汚れが掻き出されました。

これが原因となり、歯肉全体に渡っての腫れや、発赤が起こっていたのでしょう。

 

左上顎犬歯です。

この歯は、歯周ポケットが12mm以上ありました。

 

エキスプローラーを使い歯肉縁下の歯石の評価を行った際も、器具が深く入っています。

 

通水テストを行うと、歯周ポケットから注入した生理食塩水が、鼻から出てくるのが確認されました。

これで、「口腔鼻腔ろう」になっていることが分かります。

 

歯肉を剥離し、歯槽骨の一部を削り抜歯します。

 

 

抜歯後は穴の開いた状態になった部分をなめらかにトリミング・洗浄し、「口腔鼻腔ろう」の部分には、抜歯創用保護材を充填します。

 

 

そして歯肉を縫合しました。

 

ポリッシング

 

最後に、ポケットが深かった箇所に、歯科用抗生物質軟膏を注入し、処置を終了しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈処置翌日〉

「退院した日は、あまり口を気にしていませんでしたが、翌日(処置から2日後)は少し気にし始めたので、エリザベスカラーを付けました。様子は元気で、食欲はムラがありますが欲しそうにしています。」とのことでした。

 

〈処置から1週間後〉

「クシャミはあるが、膿を飛ばすことは無くなりました。元気も食欲もあります。」とのことでした。

歯肉の炎症も軽減し、抜歯・縫合部分も問題ありませんでした。

 

この状態を維持していただくため、ホームデンタルケアについて、説明いたしました。

【 歯科検診と歯みがき教室(処置から1週間) ビビちゃん 】

 

 

一年前に他院にて歯科処置を行っていたこともあり、今回、歯の表面の歯石は多くありませんでしたが、歯の裏側や歯肉縁下に多量の歯石が付着していました。

これが原因となり、歯肉の炎症・発赤・口腔鼻腔ろうを起こし、「痛み」を伴っていたと思われます。

今回の処置で、隠れていた歯石・歯垢をしっかり掻き出し、くしゃみの原因になっていた左上顎犬歯を抜歯しました。

これにより、「痛み」が無くなり、ストレスが軽減されたと思います。

 

また16歳と高齢での処置でしたので、術前から治療を行い、術中も鎮痛剤を併用し出来るだけ麻酔濃度を低くするなど、術後の腎臓へのリスクを最小限で済ませることが出来ました。

 

今後は、ホームデンタルケアと定期的な歯科検診を行ない、健康な口腔内を保ちましょう!

 

京都市 左京区 動物病院 とよだ 歯科

2017年06月28日