クシャミをすると鼻から膿が出る
アゴがいつもガクガクしている
食欲はあるが、ドライフードを好まなくなってきた
歯ブラシでの歯みがきを嫌がるので、歯みがきシートで歯を拭いているが、奥歯を触ると「キャン!」と言う
とのことで、来院されました。
一年前に他院にて、歯科処置を実施していたこともあり、歯石は多くないにも関わらず、歯肉の腫れがひどく、歯肉全体に発赤がありました。
上顎犬歯の内側に、歯垢・歯石の付着がありました。
このわんちゃんは他院にて既に、心臓のお薬を処方され、また血液検査では腎臓の項目の軽度の上昇がありました。
その結果を踏まえ、充分な術前検査を行いました。
今回の術前検査で、更なる腎臓機能の低下が認められました。
飼い主さまと相談し、処置の一週間前から腎臓に対する治療を行い、また歯肉の炎症がひどかったので、感染による炎症を軽減するため、術前から抗生物質も飲ませていただきました。
術前に再度血液検査を行いました。
すると上昇していた腎臓の項目が下がっていましたので、処置は出来ると判断しました。
歯肉縁下の汚れを1本ずつ手作業で掻き出します。
今回、歯の表面の歯石は多くありませんでしたが、歯肉縁下から多量の汚れが掻き出されました。
これが原因となり、歯肉全体に渡っての腫れや、発赤が起こっていたのでしょう。
左上顎犬歯です。
この歯は、歯周ポケットが12mm以上ありました。
エキスプローラーを使い歯肉縁下の歯石の評価を行った際も、器具が深く入っています。
通水テストを行うと、歯周ポケットから注入した生理食塩水が、鼻から出てくるのが確認されました。
これで、「口腔鼻腔ろう」になっていることが分かります。
歯肉を剥離し、歯槽骨の一部を削り抜歯します。
抜歯後は穴の開いた状態になった部分をなめらかにトリミング・洗浄し、「口腔鼻腔ろう」の部分には、抜歯創用保護材を充填します。
そして歯肉を縫合しました。
最後に、ポケットが深かった箇所に、歯科用抗生物質軟膏を注入し、処置を終了しました。
〈処置翌日〉
「退院した日は、あまり口を気にしていませんでしたが、翌日(処置から2日後)は少し気にし始めたので、エリザベスカラーを付けました。様子は元気で、食欲はムラがありますが欲しそうにしています。」とのことでした。
〈処置から1週間後〉
「クシャミはあるが、膿を飛ばすことは無くなりました。元気も食欲もあります。」とのことでした。
歯肉の炎症も軽減し、抜歯・縫合部分も問題ありませんでした。
この状態を維持していただくため、ホームデンタルケアについて、説明いたしました。
【 歯科検診と歯みがき教室(処置から1週間) ビビちゃん 】
一年前に他院にて歯科処置を行っていたこともあり、今回、歯の表面の歯石は多くありませんでしたが、歯の裏側や歯肉縁下に多量の歯石が付着していました。
これが原因となり、歯肉の炎症・発赤・口腔鼻腔ろうを起こし、「痛み」を伴っていたと思われます。
今回の処置で、隠れていた歯石・歯垢をしっかり掻き出し、くしゃみの原因になっていた左上顎犬歯を抜歯しました。
これにより、「痛み」が無くなり、ストレスが軽減されたと思います。
また16歳と高齢での処置でしたので、術前から治療を行い、術中も鎮痛剤を併用し出来るだけ麻酔濃度を低くするなど、術後の腎臓へのリスクを最小限で済ませることが出来ました。
今後は、ホームデンタルケアと定期的な歯科検診を行ない、健康な口腔内を保ちましょう!
京都市 左京区 動物病院 とよだ 歯科