
歯ブラシを使っての歯みがきが上手くできない
指でなら磨けるが、汚れが付いている とのことで来院されました。
歯みがきの仕方についてお伝えし、定期的に歯科検診に来ていただいていましたが、
徐々に歯肉の炎症が認められるようになり、最近になって歯みがきをしていたら歯がポロっと取れたとのこと。
持参された歯をみると、歯根部が湾曲していました(変形歯)
根尖周囲病巣により脱落したと考えられ、進行した歯周病があると判断し、
後日、術前検査、そして歯科処置を実施しました。

スケーリング
まず、超音波スケーラーで歯表面の汚れを落とします。
歯周プローブ検査
歯科レントゲン検査

歯槽骨の吸収はみられませんでしたが、右下顎の第1後臼歯部分の下顎骨はとても薄いことがわかりました。
また、この右下顎第1後臼歯も、術前に抜け落ちた歯と同様に変形歯でした。歯根部が湾曲しているため、将来、上顎と同じく根尖病巣が起こる確率が高くなります。この部分の下顎骨が薄いこともあり、歯周病が進行すると下顎が骨折してしまう可能性があります。
今後のケアが重要です。
右上顎第3切歯は破折していましたが、露髄はしていませんでした。
ルートプレーニングで、外からは見えない歯周ポケットの中まできれいにした後、
研磨ペーストを使って磨き、歯の表面をなめらかに仕上げます。
ポリッシング
歯の表面をつるつるに磨くことで、汚れが付きにくくなります。

処置時間が比較的短く、術後とても元気だったので、処置当日の退院となりました。

処置から1週間後
歯肉の炎症はなくなり、口腔内はとても健康な状態でした。

歯科処置を安全に行うためには全身麻酔が必要です。
そのため、麻酔をかけたことがない、持病がある、高齢であるなど様々理由でなかなか踏み切れないこともあると思います。
今回のケースでは、歯が抜け落ちたことをきっかけに処置を決断されました。
飼い主さまは、全身麻酔をかけることに不安を感じていらっしゃいましたが、
術前検査の結果では大きな異常はなく、検査結果や処置、麻酔について詳しくご説明し、
処置を任せていただけることになりました。
その結果、歯肉の炎症は全くなくなり、お口をとてもよい状態にしてあげることができました。
また、下顎骨がとても薄い部分があり、注意が必要であることもわかりました。
処置を決断され、本当に良かったと思います。
当院では、歯科診察で処置が必要となった場合、いきなり麻酔、ではなく後日必ず術前検査を行い、その結果をふまえてご相談の上、処置を実施します。
気になる症状がある場合は、安心してまずは歯科診察に来ていただきたいと思います。
処置を受けてお口が健康な状態になったわんちゃん、以前は歯ブラシを使ってのケアがなかなかできなかったようですが、
処置後は歯ブラシを使っての歯みがきが出来、頑張って続けられています。
これからもこの状態を維持できるよう、お家でのケアを続けていきましょう。