フードを食べるとギャーっと鳴く・痩せてきた<歯肉口内炎・猫破歯細胞性吸収病巣>(猫 mix 年齢不明)歯科症例87

猫(Mix) 年齢不明  男の子

 

 

3カ月位前からドライフードを食べるとギャーッというようになった。
ウェットフードならなんとか食べるが口に痛みがある様子
食欲はあるのに食べにくいため痩せてきた
口の臭いも気になる とのことで来院されました。

 

口腔後部の歯肉が真っ赤に腫れ、「歯肉口内炎」が起こっていました。

歯肉口内炎の治療は、麻酔下での口腔内清掃・全臼歯抜歯・全顎抜歯などの外科的治療と内科的治療を合わせて行うのが最も効果的とされています。

 

飼い主さまとご相談し、まず内科的治療として抗生物質を投与し、口腔内用のサプリメントも飲ませていただきました。

 

1週間後の来院時には口の痛みは軽減し、歯肉の発赤も改善していましたが、
1週間後にはまた口の痛みが出てきてしまったため、術前検査後、麻酔下での外科的治療を実施することになりました。

 

 

 

血液検査、胸部レントゲン検査を実施し、処置が安全に行えると判断しました。

 

 

 

口腔内を確認

口を正面からから見た写真です。左右の口腔後部はやはり真っ赤でとても痛そうでした。この部分を綿棒で拭いカリシウイルスの遺伝子検査を行ないました。(後日帰ってきた結果は陽性でした)

 

臼歯部分の歯肉に炎症があります。
今回の処置では、全ての臼歯を抜歯し、

このような歯の周囲に起こっている炎症をなくすことにより、口腔内の状態改善をはかります。
(全臼歯抜歯処置)
歯を支えている骨を削る手術であり、
長時間に及ぶこともあります。

 

左下顎第3前臼歯は
猫破歯細胞性吸収病巣(FORL)が認められました。

 

右下顎第4前臼歯と第1後臼歯の間に
過剰歯がありました。

 

 

歯周プローブ検査

臼歯部分のポケットは、深いところで3~6㎜ありました。

 

スケーリング

 

 

 

 

ポリッシング

 

 


抜歯処置の前に歯神経ブロック注射を行います。

吸入麻酔濃度をできるだけ低く維持することが可能になり、動物たちの早い回復につながります。

 

臼歯の抜歯処置

 


抜歯後は、歯を支えていた歯槽骨に穴があいた状態になります。
穴がなめらかになるよう骨を削り、生理食塩水で洗浄後、縫合します。



 

 

 

 

<処置翌日>
「お家に帰ってすぐはパニックになっていましたが、2~3時間で落ち着きました。元気で食欲もあります。いつものトロトロタイプのフードを食べ、口を気にすることもありません。顔つきが穏やかな感じに変わりました」とのことでした。

 

<処置から2週間後>
「食欲が増え、ガツガツと食べています。以前はウェットフードの中の具が口に当たるだけで痛いようでしたが、今は水分だけでなく具の部分もよく食べています。お家の他の猫たちにも怒らなくなり、一緒に過ごすようになりました」

 

<処置から約3カ月後>「ドライフードも食べるようになりました」体重は処置前より300gも増えていました。

 

 

 

口が痛くて食べられないというのは、とてもつらい状態です。

飼い主さまが決断され処置を実施したことにより、痛みやストレスが軽減されました。

今は穏やかに過ごしてくれていて、同居の猫ちゃんとの関係も良くなったそうです。

 

それだけ、お口の痛みは猫ちゃんにとって大きなストレスだったのですね。

 

歯肉口内炎は、全臼歯抜歯処置を行った後、治癒するのは60~70%、症状の改善が20%程度と言われています。

そのため、今後は定期的にお口をチェックしながら、状態に合わせて内科的治療も行っていく予定です。

 

 

2017年05月06日