左右とも臼歯が欠けたり折れたりしている
痛いみたいで歯みがきするとキャンと鳴く とのことで来院されました。
口腔内を確認すると、
左右の上顎第4前臼歯が破折していました。
露髄をそのままにしておくと歯髄から感染が起こり、腫れて痛みを引き起こします。
また、露髄していなくても、知覚過敏により痛みが起こったり、近い将来露髄し感染が起こる可能性があります。
破折した歯は、適切な処置により歯を残すことも可能ですが、
破折してからの経過時間や破折面の状態、露髄の有無、歯科レントゲン検査の結果などによっては抜歯処置が必要となります。
後日、術前検査を行った後、歯科処置を実施しました。
プローブ検査
上顎切歯で1本歯周ポケットが7㎜の歯がありました。
また、左上顎第1後臼歯はポケットが9㎜あり、この2本はひどくぐらついていました。
歯科レントゲン検査でも歯槽骨の吸収がみられたため、抜歯処置を行いました。
レントゲン検査
破折していた左右上顎第4前臼歯です。
飼い主さまとの充分な相談の上、2本とも抜歯処置を行うことになりました。
歯神経ブロック
まずは口腔内をきれいにします。
スケーリング
抜歯処置
この歯は3根歯(歯の根元が3本に分かれている歯)なので、3本に分割してから抜歯します
抜歯後は歯槽骨をトリミングし、きれいに洗浄してから縫合しています。
ルートプレーニング
ポリッシング
抗生物質軟膏注入
●処置から10日後
「処置翌日は顔が腫れていましたが、少しずつ落ち着いて今はすっかり腫れが引きました。
食欲もしっかりあり痛がる様子はありません」とのこと
●処置から17日後
歯肉の腫れは治まり、抜歯縫合部分も問題ありませんでした。
今回のケースでは、上顎第4前臼歯が左右ともに破折していました。
右に起こっていることが左にも・・・というのは珍しくありません。
留守番中に硬いガムを与えていたせいかも・・・と飼い主さま。
お留守番時は、できるだけ長い時間気が紛れるよう、硬く長持ちするおやつを選んでしまいがちですが、
ワンちゃんは「噛む力は強いけれど、歯は人より弱く割れやすい」ですので、注意が必要です。
今回の処置では破折した歯を残すことができませんでしたが、
痛みのある歯がなくなり、今はとても快適に過ごせているはず。
これからはおやつやおもちゃの硬さに注意して、お家でのケアを続けていきましょう。