前歯がぐらぐらしている<歯周病>(ヨークシャーテリア 5才)歯科症例115

 

前歯が何本かぐらついている

 

とのことで来院されました。

1年ぐらい前に歯が1本抜けて床に落ちていたそうですが、

「犬は歯が抜けても食べられる」という話を聞いたので、そのままになってしまっていたとのこと。

口腔内を確認すると、左上顎第2切歯がすでになくなっており、他の切歯もぐらついていました。

 

ぐらついた歯は痛みを引き起こします。

また、そのままにしておくと歯周病が進行し、顎の骨に影響を与えたり、

心臓・腎臓などの疾患につながることもあります。

 

後日、術前検査の後、歯科処置を実施しました。

 

 

 

歯周プローブ検査

 

 

歯科レントゲン検査

 

 

青矢印は、抜け落ちたと思われる左上顎第2切歯部分です。

他にも、黄矢印の歯は、歯を支えている歯槽骨が

歯周病の進行により吸収されて黒く抜けています。

 

 

上顎臼歯部分の歯科レントゲンです。

第1第2後臼歯の歯根部は、左右共に歯槽骨の吸収が認められました。

 

 

右下顎臼歯部分のレントゲンです。

第3前臼歯の歯根部が吸収され、黒く抜けていました。

この歯は変形歯でした。

(歯根が通常とは異なる形であるため、

歯根部に問題が起こることがあります)

 

これらの歯は歯周ポケットも深くひどくぐらついていたため、抜歯処置を行いました。

 

スケーリング

超音波スケーラーで表面の汚れ落とします。

その後、歯肉縁下の汚れを1本ずつ手作業で除去します。

 

抜歯処置

多根歯(歯根が複数ある歯)は、1本ずつに分割してから丁寧に抜歯します。(矢印は分割後)

抜歯窩は歯槽骨をトリミング後、きれいに洗浄してから縫合します。

(抜歯後の歯槽骨を滑らかにし、きっちり縫合することが、処置後の痛みや不快感の軽減につながります)

 

ポリッシング

 

 

歯科用軟膏の注入

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<処置から10日後>

歯肉の炎症は治まり、口腔内はとても良い状態でした。

 

 

「口の臭いが全くしなくなりました!

病院でお口を快適にしてもらったのを覚えているみたいで、

今日は自分からどんどん歩いて病院に入ってきました!」

と飼い主さま。

 

痛みを取り除いてあげることで、とても快適になったのだと思います。

 

確かにワンちゃんは歯がなくても食べることができますが、

「歯周病の治療」をしなければ、どんどん進行し、痛みや不快感・全身の疾患につながります。

 

これからはお家でのケアが大切です。

 

これからも、お口の様子、定期的に診せてくださいね。

2019年11月19日