デンタルチェック時に、乳犬歯が4本とも残存し、不正咬合が起こっていることが確認されました。
そこで、術前検査後に歯科処置を行うことになりました。
術前検査では何も異常は見つかりませんでした。
処置前の左右の咬合
青色の矢印が残存している4本の乳犬歯です。
本来、この時期に全て抜けないといけないのですが残存しているため、
黄色の矢印の下顎永久歯が外側へ出ず内側へ入り込み、
上顎の歯肉に当たろうとしています。(これを不正咬合と言います。)
今回の処置では乳歯を全て抜歯し、
上顎の永久犬歯と下顎の永久犬歯を移動させ、
できるだけ正しい咬合に収める、外科的矯正を行うことになりました。
スケーリング
レントゲン検査
レントゲン検査で歯根部(青色の矢印部分)がまだ未完成で、
外科的矯正が可能と判断し、上顎・下顎共に実施することになりました。
乳歯の抜歯
<即時傾斜移動による外科的矯正>
左側下顎
まず乳犬歯を抜歯し、歯科用エレベーターを用い永久犬歯を移動させます。
そして抜いた乳犬歯の歯根部を切断します。
切断した歯根部を、永久犬歯の根元に「くさび」として打ち込み、
永久犬歯を外側へ移動させ縫合し固定します。
右側上顎犬歯です。
下顎と同様の方法で歯根を打ち込み永久犬歯を後方へ移動させました。
これを残りの右側下顎犬歯と左側上顎犬歯にも行いました。
<処置から1週間>
元気や食欲もあり、口を気にする様子もありません。とのことでした。
抜歯・縫合を行った箇所も問題なく、
外科的矯正処置を行った下顎の犬歯は、正常な方向に向かって伸びてきていました。
<処置から1か月半後>
咬合は正常となり、歯肉炎も全くありませんでした。
乳歯が脱落する時期を過ぎても残存することで、永久歯の不正咬合を招き、
歯肉炎や歯周病をより早く起こす原因となるので、早期の抜歯処置が必要です。
すでに不正咬合が起こっている場合は、同時に外科的矯正を行うことで、咬合を正常に戻せるケースもあります。
しかし外科的矯正は、永久犬歯の歯根部が未完成な一時期しか行うことができず、
時期が過ぎてしまうと不正咬合を改善することは困難となります。
今回は良いタイミングで処置が実施でき、咬合も正常となり、子犬のうちから歯みがきを始めていただきましたので
今も良い状態を保てています。
これからも定期的な歯科検診を行いながら、良い状態を維持しましょう。