クシャミをすると鼻から膿が出る・切歯のぐらつき<重度歯周病>(ミニチュアダックスフンド 12才位)歯科症例98

 

下顎の切歯が前に出てきていて、ぐらつきもあり抜けそう。

くしゃみをすると、鼻から緑色の膿が出る。

7才位の時家に来て、その時も歯が悪く、一度他院で歯科処置を受けている。

その後歯みがきしようと試みたが、痛いのか嫌がりやめてしまった。

元気はあるが、食べにくそうにしている。とのことでした。

 

全く歯が見えないくらい多くの歯石が付着していました。

左上顎犬歯は抜歯されていましたが大きな穴が開いており、口腔鼻腔ろうが形成されていました。

 

 

術前検査時のデンタルチェックで左側だけでなく、右側上顎犬歯部分も大きな穴が開き、口腔鼻腔ろうになっていることが確認されました。

また下顎の歯肉は随分後退しており、下顎骨折が起こる可能性がありました。

 

血液検査・レントゲン検査では問題ありませんでしたが、尿検査で膀胱炎が認められたため治療を行ってから歯科処置を行うことになりました。

 

 

口腔内確認

右上顎犬歯部分です。

犬歯はすでに無く、大きな穴が開いており、口腔鼻腔ろうが形成されていました。

左側の犬歯部分も同じようになっていました。

 

 

プローブ検査

上顎は左右犬歯の口腔鼻腔ろうを含め、全部で6本の歯で口腔鼻腔ろうが確認されました。

上顎・下顎共に他の歯のポケットも深くなっていました。

 

レントゲン検査

 

左右上顎第4前臼歯と第1後臼歯です。どの歯もポケットは12mm以上ありました。

第4前臼歯の1根が口腔鼻腔ろうとなっていたため抜歯を決定しました。

 

左下顎第1後臼歯はポケットが9mmありました。

1根に吸収病巣があり進行すると下顎の骨折を引き起こす可能性があるので、抜歯を決定しました。

 

下顎の切歯・犬歯部分です。

歯周病の進行により、下顎の骨が溶け非常に薄くなっていることが分かります。

この状態も、下顎骨折が起きる可能性が十分あるので、より慎重な処置が必要です。

 

歯神経ブロック

 

スケーリング

 

ルートプレーニング

 

 

上顎第4前臼歯です。

 

 

この歯は3根歯なので、3分割にして抜歯します。

抜歯し、穴の開いた状態になった部分をなめらかにトリミングし生理食塩水で洗浄。

口腔鼻腔ろうの部分には抜歯創用保護材を充填します。

充填後、歯肉を縫合しました。

 

大きな穴が開いていた右犬歯部分です。

 

網本先生考案のダブルフラップ変法を用い、穴の縫合を行いました。

 

今回、プローブ検査・レントゲン検査で計8本の抜歯を決定、実施しました。

 

ポリッシング

 

歯科用抗生物質軟膏注入

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左右犬歯部分の口腔鼻腔ろうの閉鎖に加え、抜歯が計8本と非常に大きな歯科手術となりました。

ですが、処置後すぐから食欲もしっかりあり、

今まで舌で巻き取るような食べ方をしたのが、

次の日には口をしっかり動かし"パクパク”食べることが出来ていました。

今まで歯や口の痛みで、上手く食べることが出来ていなかったのでしょう。

 

歯周病が進行し痛みを引き起こす歯をそのままにしておけば、

いずれ抜けて痛みは楽になるかもしれません。

ですが、抜けた後の穴が閉じず口腔鼻腔ろうになったり、

徐々に顎の骨が溶け、下顎骨折が起こったりなど、

歯周病以上に悩ましい症状がでる可能性があります。

 

歯周病が起こってしまったら、

出来るだけ早く正しい処置を施してあげることで、

違和感・不快感・痛みを最小限に留め良い生活の質を保つことができます。

 

今後は今の状態が維持できるように

歯みがきを頑張りましょう!

 

2018年06月17日