口唇が腫れている・顎の下から膿が出てきた<重度歯周病>(ミニチュアダックスフンド 14才)歯科症例96

 

唇が腫れ他院を受診し、抗生物質と痛み止めを処方された。

腫れは引いたが、顎の下から膿が出てきた。

今まで歯に関しては2回処置を受け、抜歯を行った箇所もある。

今回は歯のことを積極的に診ている病院で、必要なら処置を行いたい。

元気もあり、食欲も変わらないが人のそばに来たがるようになった。とのことでした。

 

ほぼ全ての歯に多量の歯石が付着し、口の周りを触ろうとすると、とても嫌がり痛みがあるようでした。

処置を行うことをお勧めし、飼い主さまも希望されましたので術前検査を行うことになりました。

14才と高齢での麻酔処置となりますので、より充分な検査を行いました。

 

 

術前検査にて心臓と腎臓の機能の低下が認められました。

そこで、まず投薬による治療を始め状態を安定させた後、再度評価を行い飼い主さまとの話し合いのうえ処置を行うこととなりました。

 

 

プローブ検査


ポケットは、ほぼ全ての歯で深くなっており、右犬歯・左右上顎第4前臼歯は12mm以上もありました。

下顎の左右第1後臼歯は、8mm・11mmと深いポケットが形成されていました。

 

レントゲン検査

 

下顎左右第1後臼歯です。

歯根部に吸収病巣が認められました。

 

 

歯神経ブロック

 

スケーリング

 

ルートプレーニング

 


右側上顎犬歯です。

歯石を取ると、プローブが根元まで入っているのがよく分かります。

また通水テストを行うと歯周ポケットから注入した生理食塩水が、鼻から出てくるのが確認され「口腔鼻腔ろう」になっていることが分かり、抜歯処置を行いました。

 

穴の開いた状態になった部分をなめらかにトリミングし生理食塩水での洗浄。

口腔鼻腔ろうの部分には抜歯創用保護材を充填します。

 

 

充填後、歯肉を縫合しました。

 

今回問題が起こっていたと思われる左右第1後臼歯です。

多根歯(歯の根元が2本または3本に分かれている歯)は、歯科用の高速バーで切断・分割してから抜歯しました。

抜歯後、抜歯創用保護剤を入れ縫合しました。

 

 

今回、プローブ検査・レントゲン検査で5本の抜歯を決定、実施しました。

 

ポリッシング

 

歯科用軟膏注入

 

最後に口腔内をきれいに洗い流し終了しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

<処置翌日>

「元気も食欲もあるが、震えるのが気になる。」とのことでした。

→翌日、「震えていたのはふやかしたフードが冷たくなり、それを食べて体が冷えたのだと思う。温めたら震えることはなくなった。」とのことでした。

 

<処置から1週間後>

「元気も食欲もあり、震えることもなくなりました。口も気にしていません。」とのことでした。

歯肉の炎症も引き、縫合部分もきれいで問題ありませんでした。

歯科用抗生物質軟膏の再注入を行いましたが、ポケットは全ての箇所で浅くなっていました。

 

 

今回、14才と高齢での歯科処置となりました。

以前他院での歯科処置後に体調を崩したことや、今回の検査で心臓・腎臓の機能の低下が認められましたので、飼い主さまは今回の歯科処置の実施を大変心配されていました。

ですので、血液検査結果とわんちゃんのコンディション、飼い主さまのお気持ちも含めて充分話し合い、お互いが納得したうえで処置の実施を決定しました。

実際の歯科処置では、この子の病態に合わせたオリジナルの麻酔管理を行い、安全に処置を終わらせることが出来ました。

 

口腔内のトラブルは高齢で多く、また重症化していることも多いです。

だからこそとよだ動物病院では、充分な検査・飼い主さまとの話し合い・その子に合わせた麻酔管理を行います。

 

2018年04月18日