<重度歯周病>歯が抜けた・ドライフードを食べない・口の痛み・クシャミをする(ミニチュアダックスフンド 11才)歯科症例84

ミニチュア・ダックスフンド 11才9カ月 男の子

 

歯周病がひどい

何本か自然に抜けた歯がある

最近ドライフードを硬いままだと食べなくなった

なんとなく元気がなく、歯が痛いのではないだろうか

クシャミをしていて、だいぶ口の状態が悪いと思う

歯科処置が必要かなと思っているとのことで来院されました。

 

口腔内を確認すると、切歯はひどくぐらついていました。

歯肉は赤く炎症を起こし、歯肉が後退している部分も多く、多数の歯の歯肉溝から排膿があり、重度の歯周病が認められました。

 

しかし歯石は少なく、以前無麻酔での歯石取りを受けたとのことでした。

麻酔下での歯科処置が必要であることをお伝えしたところ、処置を希望され、後日まず充分な術前検査を行いました。

 

術前検査でお預かり中には、クシャミをしており、鼻から膿が出ていました。

このワンちゃんは、聴診で心雑音が認められたため心臓の検査も行い、心臓病であることが分かりました。

まず飲み薬による心臓の治療を開始し、状態を安定させた後、歯科処置を行いました。

 

より安全な麻酔・処置のため、術前には必ず充分な検査を行います。

その結果、治療が必要と判断された場合には、飼い主さまと相談の上治療を開始し、状態が安定してから処置を実施いたします。

 

また歯肉の炎症がひどかったので、感染による炎症を軽減するため、術前から抗生物質も飲ませていただきました。

処置当日までにクシャミは少し改善したそうですがやはり口に痛みがあるのか硬いままでは食べないとのことでした。

 

処置当日にも再度胸部の超音波検査を行い、今の心臓の状態を確認してから処置を実施しました。

 

麻酔導入後、まずは歯周プローブ検査です。

歯周ポケットが10mm以上ある歯もありました。

 

歯科レントゲン検査

左上顎犬歯の歯根部です。

この歯は問題ありませんでした。

 

 

上顎切歯です。右上顎第2切歯と左上顎第1切歯の歯根部に吸収病巣が認められました。

 

 

下顎の切歯です。左下顎第3切歯に吸収病巣が認められました。

 

 

左上顎第4前臼歯と第1後臼歯です。

第4前臼歯は問題ありませんでしたが、第1後臼歯は歯根部に吸収病巣が認められました。

 

次は歯神経ブロックを行いました。

 

超音波スケーラーを使って汚れを落とし、ルートプレーニングを行いました。

 

 

歯肉縁下の汚れを1本ずつ手作業でかき出していきます。

このような専用の器具を使用しての処置は、繊細な技術が必要であり、また痛みを伴います。

全身麻酔下で行うことにより痛くなく怖くないように、より安全に確実に行うことが出来ます。

 

汚れを落とした後、ポケットが非常に深かった上顎の歯に、通水テストを行いました。

通水テスト

右上顎犬歯と左上顎第3切歯は歯周ポケットから注入した生理食塩水が鼻から出てくるのが確認され、

「口腔鼻腔ろう」になっていることがわかり、抜歯処置を行いました。

*口腔鼻腔ろう:上顎歯の歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨が吸収され鼻腔まで達します。

 すると口腔と鼻腔がつながった状態になり、これを口腔鼻腔ろうと言います。

 クシャミ・鼻水・鼻出血・目ヤニなどの原因となり、根本治療はまず原因となる歯を抜歯することです。

 

歯科検査結果により、今回の処置では9本の歯を抜歯・縫合しました。

 

歯科処置=歯を抜く・・・ではありません。

必ず歯周プローブ検査・レントゲン検査(口内法・口外法)・通水テストなどの様々な検査を組み合わせ、抜歯しなければ治療が出来ない・残しておくと痛みが残る・安全に処置できると判断した場合にのみ抜歯処置をします。

 

不必要な抜歯は行わずできるだけ今ある歯を大切に残し、痛みのない毎日を送れるよう処置を行っています。

 

多根歯(歯の根元が2本または3本に分かれている歯)は歯科用の高速バーで切断・分割してから抜歯しました。

 

この歯は左上顎第1後臼歯です。

 

右上顎犬歯です。

歯肉を剥離し(写真左)抜歯しています(写真右)

 

 

抜歯後は、穴の開いた状態になった部分をなめらかにトリミング・生理食塩水にて洗浄し、口腔鼻腔ろうの部分には抜歯創用保護材を充填します。

 

 

歯肉を縫合

 

左上顎第4前臼歯は破折していましたが、露髄はしてないと判断し、歯冠修復処置を行いました。

 


 

 

 

 

 

 

🍀 退院時には、歯科検診結果表をお渡ししています。🍀

 

心臓疾患のあるワンちゃんでしたが、処置翌日元気に退院しました。

退院翌日に様子をお伺いすると、

「食欲もしっかりあり機嫌よくしています。術後ですが思ったより元気で、口を痛がる様子もありません。」とのことでした。

 

経過①(処置から1週間後):「初めは口を気にして床にこすりつけたりしていましたが、今は気にならないようです。クシャミはたまーにしますが、続けて何回もするのは無くなりました。」とのこと。

歯肉の炎症は引いており、縫合部分も問題ありませんでした。

歯科用抗生物質軟膏を再注入しました。歯周ポケットは浅くなっていました。

 

経過②(処置から16日後):歯肉の炎症はほぼなくなりました。

 

これからはお家でのケアが大切です。

歯みがきの仕方についてお伝えしました。

 

「以前からお家でのケアは行っていましたが、今回はあっという間に口の状態が悪くなり、歯みがきでなんとか良くならないかと頑張りましたが、どんどんひどくなってしまいました。」とのこと。

 

これからは歯周ポケットを意識した毎日のブラッシングと定期的な歯科検診で、お口の健康を保っていけるといいですね。

より口腔内環境を良く保つため、専用のサプリメントも試していただきました。

 

引き続き、ご家庭でのデンタルケア、頑張りましょう!

 

2016年12月19日